遺産

人が亡くなると相続が発生します。
故人が所有していた財産は、相続財産として相続人(又は受遺者)に承継されます。

遺言書があればその内容に従って分割されることになりますが、なければ相続人全員で協議して分割方法を決めることになります。

遺産分割協議をする場合、多くの方は故人の財産全ては協議の対象になると思われていますが、実はそうではありません。

故人の相続財産のようだが相続の対象とならないもや、遺産分割の対象とならないものがあります。

相続財産

相続が生じ遺産の分割方法を決める(遺産分割協議)場合、まずすることは分割対象となる相続財産の特定です。

対象となる相続財産

以下の財産が遺産分割の対象となります。

  1. 不動産
  2. 現金
  3. 預貯金
  4. 有価証券(株券、国債等)
  5. 動産(自動車、宝石等)※1
  6. 借地権 ※2
  7. 不動産賃借権(公営住宅は除外)※2
  8. ゴルフ会員権(死亡による会員資格停止規定がある場合は除外)等々
  • ※1.全ての動産について遺産分割協議書にその分配方法を記載する必要はありませんが、自動車や宝石等の高額な動産については後々処分方法でトラブルにならないように協議して決めておくようにしましょう。
  • ※2.借地権や不動産賃借権を相続人が相続する場合、貸主の承諾は不要です。
    借地権(地上権)が登記されていれば、不動産の相続と同様に相続を原因として借地権(地上権)名義人の変更登記をします。(登記申請には、貸主の印鑑は必要ありません。)

    対象とならない相続財産

    1. 一身に専属する権利義務 ※3
    2. 生命保険金 ※4
    3. 死亡退職金 ※5
    4. 遺族給付(厚生年金保険法、国家公務員等共済組合法等による遺族への給付)
    5. 祭祀財産(位牌、仏壇、墓石等)※6
    6. 葬儀費用 ※7
    7. 香典 ※8
    8. 預貯金債権以外の可分債権
    • ※3.対象となる権利義務としては、生活保護受給権や扶養義務、”身元”保証人等々があります。
    • ※4.保険契約で指定されている保険金受取人が当然に受け取ります。
      ただし、故人の遺産に比べて保険金が過大であれば、保険金が遺産分割の対象とされた事例があります。
    • ※5.通常、会社の就業規則等で受給者が決められている場合が多く、規則に従って受給者が受領します。
      このような規則がなければ、遺産分割の対象となります。
    • ※6.祭祀主宰者が承継します。
      祭祀主宰者は、故人が指定していればその者が、指定がなければ慣習で決めるとされていますが、実際は慣習に倣い相続人間で話し合って決めることになるでしょう。
    • ※7.葬儀費用は故人が亡くなった後に発生する費用なので、故人の財産にはなりません。
      つまり、故人の財産から当然に葬儀費用を差し引く、ということにはならないので喪主が支払うことになるのですが、相続人間で話し合って故人の遺産から支払うことも多いです。
    • ※8.喪主が葬儀費用を負担する場合、香典は喪主が取得し葬儀費用に充当するでしょうが、香典額が大きいともめる原因になりかねません。香典が余った場合、それを喪主が取得するか相続人全員で取得するかでもめることがあります。喪主となっても1人で葬儀の全てを決めるのではなく、他の相続人を話し合いながら決めていくことでトラブルを防ぐことができます。

    注意すべき財産

    以下の財産については、取扱いに注意が必要です。

    遺産から生じる新たな財産

    故人が亡くなった後に生じる利息や配当金、不動産からの賃料等は、基本的に遺産分割の対象にはなりません。

    生じたものは、法定相続割合に従って分割されることになります。

    ただし、相続人全員が了承すれば、協議して分割することは可能です。

    名義預金

    親が子供名義で、おじいちゃんが孫名義で預金口座を作成することは珍しくはありません。

    このような預金を「名義預金」と言います。

    名義人自身としては、自分のために故人が預金をしてくれていたと受取り、預金は自分が相続すべきものと考えるかもしれませんが、純粋に名義を子供、孫にしているだけで、実質的に故人が口座管理していれば故人の財産として遺産分割協議の対象となります。

    名義預金ではなく、故人から名義人に「贈与」されたものと主張するには、名義人が口座の存在を知っていて、通帳や銀行印、キャッシュカードを管理していた事実等が必要になります。

    金銭債務・保証債務

    借金のような金銭債務も「負」の相続財産となります。

    ただ、他の財産を異なるのは、「相手」がいることです。

    この場合の「相手」とは、債権者(貸主)になります。

    もし、相続人が2人いて、2人が遺産分割協議で1人が故人の不動産や預貯金の殆どを相続し、自分の財産をほとんどもっていないもう1人が借金を相続すると決め、それが債権者に対して有効になってしまうと、故人の財産から回収しようと思っていた債権者にとっては大きな損害を被るおそれが生じます。

    そこで、法律は債務は法定相続割合に従って相続するように規定されており、債権者は相続人が借金に関してどのような分割協議をしていても、法定相続割合に従って各相続人に請求することができます。

    ただし、法定相続割合と異なる分割をした場合(例えば、相続人のうち1人が借金を引き継ぐ等)でも、それを債権者が承諾してくれたら問題ありません。

    承諾後は、債権者は決められた特定の相続人しか請求できなくなります。