隣は空き地になっているが、誰も管理していないようで荒れ放題になっている。
不法投棄されたゴミや廃棄物、生茂った雑草、悪臭、害虫の発生等々で困っている。
管理するようお願いしようにも所有者が誰だか分からない。
このように誰にも管理されていない空き地の急増が社会問題になっています。
放置されているので土地は荒れてしまい周辺に悪影響を与えています。
そこで、国は空き地、空き家を管理し再利用しやすくするための法整備を行いました。
「所有者不明土地・建物管理制度」を新たに創設し、所有者が分からず放置されている土地(建物)を裁判所が選任した管理人が適切に管理できるようにしました。
ここでは、この制度を利用して自分の土地の隣の空き地を取得できるかについて説明します。
所有者不明土地管理制度
所有者が不明な土地の管理は、裁判所に選任された不在者財産管理人や相続財産管理人が行うことになっています。
しかし、両者の管理対象は不明者の財産全部に及ぶので、所有する不動産だけを管理・処分したい場合は使い勝手が悪いものになっていました。
そこで、不動産だけを対象とした管理・処分制度として、新たに「所有者不明土地・建物管理制度」が創設されました。
対象となる土地
どんな土地でも対象となるのではなく、対象となるには以下の要件に適合する必要があります。
- 所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地
- 裁判所が必要があると認める土地
第1要件
所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地であることが要件になります。
単に所有者が分からない、どこに住んでいるか分からないではダメで、十分な調査をしても分からないことが必要です。
調査としては、登記簿上の所有者が個人であれば、登記簿上の住所、住民票上の住所に居住していないか、所有者が亡くなっていれば相続が発生しているので、その相続人に対して同様の調査を行います。
そして、調査の結果、所有者の居住先や相続人が判明しない場合は、第一要件に該当することになります。
相続人は判明したが全員が相続放棄をしている場合、土地の所有を特定できないので当該要件に該当すると考えられています。
所有者が法人(会社)の場合の調査は、登記簿上の本店所在地や代表者の住民票上の住所を調査します。
第2要件
第2の要件として、裁判所に管理人による管理が必要と認められることが必要です。
所有者による管理が不適当であることによって、他人の権利・法的利益が侵害され又はそのおそれがある土地・建物とされています。
利益侵害(そのおそれ)が要件とされており、隣地であれば、不法投棄されたゴミや廃棄物によって悪臭や害虫により困っている、大雨の後に土砂が流れ込んでくる等々、平穏に生活する上で支障をきたすような状況が想定されます。
侵害状況を申立てし、裁判所に管理人による管理が必要と認められるかはケーズごとに裁判所が判断することになります。
申立人について
誰でも申立てられるわけではなく、申立てるには「利害関係人」でなければいけません。
土地が適切に管理されていないことにより不利益を被るおそれのある隣地所有者、共有者、当該土地を取得して公共事業を実施しようとする者等が「利害関係人」該当するとされています。
※民間の買受希望者も排除されるものではなく、希望の強弱や代金の支払い能力などを加味して総合的に判断するとされています。
隣地所有者に関しては、隣地所有者だからといって常に利害関係人として申立人になれるわけではなく、対象土地の形状や性質、管理状況、不利益の程度等、個別具体的に判断されることになります。
申立
申立は、所定の申立書に必要な書類、資料を添付して行います。
申立書には、「申立の趣旨」「申立の原因(利害関係を示す具体的事情や所有者不明土地に該当する事情等)」「発令の必要性(何ら管理されていない状況、必要とされる管理行為の内容等)」を記載します。
これに、所有者に宛てた手紙などで「あて所に尋ね当たらず」の理由が返送されたもの、所有者不明土地・建物について適切な管理が必要な状況にあること示す資料、不動産目録、登記事項証明書、固定資産評価証明書、地積測量図、公図、不在住証明書等々を必要に応じて添付します。
費用
申立にあたり収入印紙(1,000円)と郵便切手(6,000円)が必要です。
このように申立にかかる費用は数千円で済みますが、この他に「予納金」を納めなくてはいけません。
予納金は管理費用や管理人報酬に充当されますが、一定の金額ではなく裁判所が土地の管理を考慮した上で決定します。
おおよそですが、20~100万円位かと思われます。
所有者不明土地管理命令
申立が認められると、裁判所より「所有者不明土地管理命令」が発令され、管理人が選任されます。
発令に際して、その旨の公告を行い、一定期間(1~3ヶ月)内に異議の届出がないかを確認し、その後、正式に発令されます。
管理人が行うのは、保存行為と性質を変えない範囲内での利用又は改良になります。
管理人選任の効果
裁判所によって管理人が選任されると、その旨が対象土地の登記簿に登記されます。
これにより、対象不動産の管理・処分権者は管理人となり、知れない場所にいるかもしれない所有者であっても処分することはできなくなります。
※所有者は裁判所に管理命令取消しの申立を行い権利を回復すことができます。
隣地の取得
隣地を取得するには、選任された管理人により売却されることが必要です。
売却行為は管理人に与えられた権限を超えるものとなるので、「裁判所の許可」が必要になります。
まだ、制度は始まったばかりのなので、具体的にどのように運用されるかは今後明らかになっていくと思いますが、この制度は管理放棄されている空き地を無くし土地を有効活用することを目的としていることを考えれば、受けている不利益の状況、支払い能力等々に問題が無ければ、裁判所は売却を許可する方向にあるのでは、と予想しております。
荒れ放題の隣地でお困りの方は、この制度の利用をご検討下さい。
参考書籍)民法・不動産登記法改正と司法書士実務
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