名義株

名義株とは

名義株は一般的にはなじみがない言葉ですが、特に昭和や平成初期に設立された中小企業等に存在していることが多い株です。

名義株とは、簡単に言えば名義人となっている株主と実質的に当該株を所有している人が異なる株のことを言います。

株主名簿にはAという人が100株所有しているように記録されているが、実はBという人がAの名前を使ってお金を出して100株を取得して実質的な株主(引受人)となっている。
このような場合、当該100株は名義株の状態にあると言えます。

何故このようなややこしい事をするのかと言うと、主に昔の会社設立に関する法律が関係します。

現在は1人でも簡単に会社を設立できますが、昔は発起人が7人以上でないと設立できない、というかなり高ハードルが設けられている時代(平成2年以前)がありました。
このため、会社を設立しようとする際、7人を確保するために親族や知人に名前だけの発起人を頼み(名義借り)設立するような事が多くありました。

また、何らかの理由で発起人、株主として自分の名前を出したくない場合や、親が子供名義の銀行口座を作るような感覚で子供を名義人としてある程度の名義株を故意に作るようなこともありました。

この場合、発起人としての出資額は実質の設立者が出しますが、出資に伴い発行された株式は名前だけの発起人名義となります。

名義株の問題点

名義株を実質的に所有している方、名義人の方が健在で、互いに状況を理解し合って実質的所有者が株を保有している間は問題ないでしょう。

しかし、長年が経過する間にいろいろな事情が加わり名義人であって方が所有を主張することがあるかもしれません。

どちらかに相続が発生して経緯を知らない新たな関係者(相続人)が出てくると、株の真の所有権者は誰かでもめるおそれもあります。

また、名義株を保有している経営者が子に経営を任せる上で株を譲渡等する際、あいまい状態にある名義株をそのまま次の代に引き継がせることは将来のトラブルの原因にもなります。

事業譲渡や合併等の再編をする際も、名義株の処理が問題になります。

会社と名義株

会社法126条には、「株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所にあてて発すれば足りる。」とされています。

つまり、名義株であっても株主名簿に記載されている者(名義人)を株主として扱えばよいとなっています。
※ただし、名義人と実質的所有者間においては、所有について争いなるおそれはあります。

しかし、名簿上の株主ではない者(実質的な所有者)が権利行使している場合や株主名簿が存在しない場合は、その取扱いが問題になります。

名義株の真の所有者について争いが生じると、会社の経営にも大きく影響します。
会社が事業承継や合併等の再編等を行う場合、名義株が問題となり手続きを進めることができない状態にもなりかねません。

名義株が相続の対象となれば、名義人か引受人かで相続税にも影響します。

株主名簿が無ければ会社法126条は適用されないので、所有が明確でない「名義人」や「引受人」が参加した株主総会決議の有効性が疑問視されるおそれもあります。

以上のような事を考慮すると、名義株は早急に解決しておくべき問題と言えるでしょう。

名義株は誰のものか?

名義株の所有について争われた事例で、最高裁は「他人の承諾を得てその名義を用い株式を引き受けた場合においては、名義人すなわち名義貸与者ではなく、実質上の引受人すなわち名義借用者がその株主となるものと解するのが相当」との判断を示しました。

名義人ではなく実質上の引受人が真の株主となるので、名義人以外の者が名義株として株主としての地位を争う場合、自身が実質上の引受人であることを主張することになります。

実質上の引受人

過去、いくつかの裁判で「実質上の引受人」と判断される基準が示されており、それも含めて以下のような事項を検証していき判断することになります。

株式を取得する際に誰がお金を出したか、株主総会でどのように議決権が行使されているか、当事者間(名義貸与・借用者)の関係性・合意内容、配当、会社との関係、株券を発行している会社であれば誰が保有しているか等々。
中でも、「誰がお金を出したか」が重要にポイントになります。

また、時効取得が完成していれば、名義人による時効取得が認められる可能性もあります。

名義株への対応

名義株の存在が疑われる場合、会社として将来のトラブル解消のためにも当該名義株の帰属者を決めておいた方が良いでしょう。

決めるためには、調査が必要です。
先に述べた最高裁判例、その他判例等に従い事実関係を調査していきます。

まずは、当事者たちへの聴き取りにより事実関係を調査していくことになるでしょう。
帰属に争いがなければ、当事者間で確認書等を作成して名義株の帰属を確定させます。

当事者間で帰属に争いがあれば、最終的には裁判で決着をつけることになります。

裁判にならないまでも、当事者間で最終的な帰属を決められないような場合、会社としては強制的に株の帰属を決める(会社が取得する等)ことを検討することが可能です。

特別支配株主に対する株式等売渡請求や株式併合、相続人等への株式売渡請求、株式の種類を変更する等の方法を使って会社が名義株を取得することも可能です。

ただし、手続きの際に株主総会決議が必要な場合もあるので、可決できる株式数を確保していることが前提となります。

いずれにしても、簡単な手続きではなく会社法に従って適法に手続きを行っていかなければいけないので、余裕を持って手続きに着手するようにしましょう。

※参考文献:株主管理・少数株主対策ハンドブック

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