換価相続

所有者が不明な土地・建物の売却

今回、新たに制定された所有者不明不動産の管理制度の大きな目的は、放置状態にある土地・建物の再利用・有効活用にあります。

所有者不明不動産を売却を含めた再利用をするためには、裁判所に管理人を選任してもらい、管理人による売却等は通常の管理行為を超えるものになるので、裁判所の許可が必要になります。

所有者不明土地(建物)管理命令の申立

利害関係人は、所有者不明不動産の所在地を管轄する地方裁判所に「所有者不明土地管理命令」「所有者不明建物管理命令」の発令を求める申立をします。

管理命令の発令は、発する旨の公告を行い1ヶ月以上経過しても異議の申出がないことが要件となります。
よって、どんなに早くても1ヶ月はかかります。

異議の申出がなく発令され管理人が選任されると、裁判所の嘱託により対象不動産に管理命令された旨の登記がされます。

申立書の作成

申立をする際、自身が利害関係人に該当するかの判断が必要です。
隣接地所有者であっても不利益を被る状況にないと裁判所に判断されると、利害関係人と認められない可能性があるので、現況、管理状況、形状等々を調査し、どのように自分に影響しているかを裁判所に申立てる必要があります。

土地・建物の買受希望者は、購入動機、資金、購入後の計画等々をベースに土地・建物の利用に利害があることを裁判所に認めてもらう必要があります

申立書には、申立の趣旨、申立の理由を記載します。
申立の理由として、当該不動産の現状、管理状況等により損害を被るおそれがあることを説明します。

添付書面としては、当該不動産の登記事項証明書や公図、戸籍や住民票上の住所に居住していないことを証する不在住証明書や不在籍証明書、現状を調査した調査報告書、管理命令の発令をお願いする上申書等々があります。地籍測量図、公図、空中写真等の資料も有効です。

※当該不動産の登記事項証明書は誰でも取得することができるので、登記簿上の所有者の住所を知ることができます。
しかし、第三者の戸籍謄本や住民票は正当な理由がない限り他人が取得することはできません。

申立書、添付書類の作成、収集は司法書士にご依頼いただけます。

予納金に注意

申立が認められ管理人が選任されたら、当該管理人は実際に対象不動産の管理をすることになります。

人が動けばお金が発生します。
管理するための費用はもちろん、管理人への報酬も発生します。

これらの費用は、最終的には売却代金から支払われることになりますが、売れるまでに発生する費用は申立人が申立て時に予納金として裁判所に納めることになります。

予納金がいくらになるかは、対象となる不動産や管理方法等で変わります。

相続財産管理人や不在者財産管理人のケースを見ると、数十万円からケースによっては100万円を超えることもあります。

売買に関する裁判所の許可

売却には裁判所の許可を得ることが必要です。

当該制度はまだ施行されていませんが(令和4年時点)、手続きとしては不在者財産管理人規定を参考にすることができます。

不在者財産管理人の権限は、
・保存行為
・代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
と規定されており、所有者不明土地・建物管理人の権限と同じです。

不在者財産管理人が売却等の権限外行為するときも、事前に裁判所の許可が必要です。

申立人の住所氏名、不在者の住所氏名、申立の趣旨、申立の理由を記載した許可申立書を裁判所に提出します(土地・建物の物件目録を添付)。
また、更に何らかの上申すべき事由等があれば、上申書も併せて提出します。

不在者財産管理人制度の管轄は家庭裁判所、所有者不明土地管理命令の管轄は地方裁判所と管轄に違いはありますが、似たような流れで裁判所の許可を得ることになると思われます。

売買取引と登記

裁判所の許可を得て、当初の管理人としての権限を超えて売買取引を行います。
売買取引が成立し売買契約締結後、通常、代金支払い、名義変更手続きを同時に行います(決済)。

売買契約は、所有者不明不動産の管理人と買主が当事者として締結します。

名義変更も、申請書の権利者欄は買主、義務者欄は売主として不明者の氏名を記載し、同時に管理人の氏名も記載します。
申請書には登記原因証明情報という書類が必要になり、裁判所の許可を得た事、売買契約した事、代金を支払い名義変更する事等を記載します。

売買契約や登記申請には、裁判所の許可等の専門知識が必要になります。
ご相談、ご依頼は、当事務所にお任せください。

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