家賃滞納

副収入として、将来の年金的な収入として投資用としてアパート、マンションを一棟購入される方が多くなっています。

また、空き家を安く購入しリフォームして貸家として運用される方もおられます。

賃貸業は、毎日何かをしなければいけないとういような業種ではないので、副業にしやすく若い方も含めて関心を集めているようです。

以前であれば、土地の所有者が土地活用として、土地を担保にし銀行からお金を借りてマンションを建てるのようなケースが多かったですが、現在は、会社員の方がある程度頭金を貯め、後は借入をして不動産を購入して賃貸するケースも多くなってきました。

優良な賃借人にめぐまれ安定的に賃料収入が得られればよいのですが、賃貸業をしていればトラブルも当然起こり得ます。

そして、トラブルの中でも経営に大きく影響するのが「家賃滞納」でしょう。

滞納されている部屋から賃料収入を得られない、居住されているので他者に賃貸できない、と賃貸業に大きく影響します。

多くの方は金融金から借入をして賃貸業をしているでしょうから、家賃収入だけでは返済金に足らず、手出ししなければいけないようなことにもなりかねません。

家賃滞納には適切な対応が必要ですが、ここでは、3ヶ月以上滞納状態が続いている場合の対処について解説します。

滞納に対する対処

家賃が滞納したら、当然、督促をすることになります。

3ヶ月以上滞納している状態は、何度か督促しても支払いがない状態なので、今までやっていた督促のやり方を変える必要があるでしょう。

1ヶ月分さえ払えない状態にあるので、滞納した賃料を回収するのは難しい状況にあります。

これ以上、滞納を積み上げていっても未回収が大きくなるだけなので、早急な対応が必要になります。
既に3ヶ月以上滞納されているので、「退去」を前提に動くことになります。
※家賃滞納の理由として退去を求めるには、基本的に「3ヶ月」以上の滞納が必要になるとお考え下さい。

退去は、法律的な手順を経て行う必要があります。

退去のための手続

手順としては以下のようになります。

  1. 滞納額支払い催告
    支払い期限を設けて、期限までに支払いがない場合は賃貸借契約を解除する旨を記載。
  2. 訴訟提起
    賃貸借契約を解除する旨を賃借人に通知後、滞納額の支払い、部屋の明け渡しを求める訴訟を提起します。
    訴訟中に占有者(入居者)が変わるような妨害行為を受けそうな場合、訴訟提起の際、占有移転禁止の仮処分をします。
  3. 強制執行
    訴訟に勝訴した後、部屋の明け渡しのために執行裁判所に強制執行の手続をします。
  4. 退去催告
    強制執行申立から2週間以内に、催告から1ヶ月程度の退去期限(断行期日)を指定して、それまでに立ち退くように現地にて当人に催告します。
    断行期日は執行官と打ち合わせして決めます。
    断行日に残置物を搬出することになるので、催告の際に搬出業者に同行してもらい見積をとります。
    搬出業者は自分で手配できますし、執行官から業者リストをもらうこともできます。
  5. 断行(実行)
    期限までに退去していなければ、執行官が現地に赴き強制的に部屋から退去させ、明渡し完了となります。
    搬出業者及び、明渡し後に滞納者が無断で部屋に入ることを防ぐために鍵を交換する必要があるので、鍵屋さんにも同行してもらいます。

※当事務所にご依頼された場合、強制執行に関して司法書士は代理権がないので、依頼者(賃貸人)が退去催告、断行に立ち合う必要があります(司法書士も同行します)。

残置物の対処

執行官による強制退去で、賃借人本人は部屋から退去させられますが、部屋にある家具等の残置物(動産)はどうするか?

強制執行の目的は部屋の明け渡しなので、残置物は目的外動産となり、執行の対象とはなりません。

しかし、残置物をそのままにしておくと、真の部屋の明け渡しにはならないので、動産に対しても何らかの対処がされます。

民事執行法第168条に、

  • 執行官は、強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。
  • 執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。

と規定されています。

この条文により、残置物は基本的に本人又は親族等に引き渡すことになります。

次に、引き渡しができないときは(本人がいない、引取りを拒否した等)、事前(明渡しの催告の時)に部屋の動産を調査し、断行(強制執行)実施日に売却できそうなものがあれば、断行日に売却する旨の決定をして公告した上で、断行日に売却処分します。

また、公告をしていない場合でも、引渡しをすることができず、かつ、相当の期間内に当人等に引き渡すことができる見込みがないときは(高価な動産は除く※1)、即日当該動産をその場で売却、又は断行日から1週間未満の日を当該動産の売却の実施の日として指定する(この場合は売却日まで倉庫等で保管することになります。※2)ことができるとされています。

※1.宝石、骨とう品、高級家具、大型テレビ・冷蔵庫等。※2.搬出して倉庫で保管すると費用もかさむので、明渡しを受けた部屋を保管場所とすることを裁判所に上申して認めてもらえれば、移動することなく同じ場所で保管することができます。
早急に入居者募集のための清掃、修理等をしたい場合、同じアパート・マンションに空室があれば、そこを保管場所とすることで費用を抑えることができます。

高価な動産等、上記の方法で処分できない動産がある場合、動産執行にて対処することになります。

執行官が動産を保管し、動産の価値を評価し、公告を経て売却処分することになります。

売却について

高価の動産が見込まれる強制執行では、買い取り業者が買い取ってくれる場合もありますが、家賃滞納での強制執行に伴う残置物処理では、高価な動産が残っていることは期待できません。

よって、多くの場合、賃貸人自身が買取って自分の所有物にして、すぐに処分することになります。

ただし、買い取るといっても、その費用は滞納額に充当されるので、実質的に賃貸人が購入のためにお金を持ち出すことはないでしょう。

注意すべきポイント

訴訟を起こした後、強制執行までいく前に入居者が黙って退去(夜逃げ)するケースも多いです。

これで、強制的に退去させる必要はなくなるので、強制執行をしなくても済むかというと、そうでもありません。

多くの場合、家具や家電、衣類等々がそのまま部屋に残されています。

しかし、家賃を滞納したまま逃げたのだから、戻っては来ないだろうと勝手に残置物を処分することはできません。
あくまでも、残置物は入居者の所有物だからです。

実際に、家賃滞納者と数ヶ月間連絡がとれなくなり、部屋に行っても居住している形跡がないとして、強制的に部屋に入り残置物を撤去した後、入居者が戻ってきて高額な物品が勝手に廃棄されたと高額な損害賠償を求める裁判を起こした事例もあるようです。

また、同じように数ヶ月間連絡がとれなくなって撤去したが、実は、長期入院していたというケースもあり、勝手に判断して処分することは危険です。

残置物がある以上、適法に処分するには強制執行する必要があります。

まとめ

裁判から強制執行までを行って退去させる場合、期間も費用もかかります。

期間としては6~12ヶ月位かかりますし、費用も50~100万円前後かかります。

強制執行には、執行官だけでなく、鍵屋さん、残置物の搬出業者の手配もしなければいけません。

但し、訴訟をおこしても、全てが強制執行までいく、というわけではありません。

部屋に居座って執行官から強制的に退去させられる、というケースの方が少ないと言えます。
裁判を起こされれば、いずれ強制的に出て行かされるのは明白なので、本人としても次の移住先を見つけておきたい気持ちもあるはずですが、引っ越し費用さえがない場合がほとんどです。

そこで、訴訟から強制執行までの期間や費用負担を考えて、滞納分を免除、引っ越し費用も負担することを条件に入居者自ら出て行くように交渉する賃貸人の方もおられます。

滞納を免除した上に引っ越し費用も、、と感じられるかもしれませんが、最悪1年近くその部屋から賃料を得られない上に多額の裁判・執行費用がかかることを考慮すると、このような選択肢も検討する価値があると言えます。

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