海外に住む日本国籍を有する日本人が亡くなった場合、当然に相続が発生します。
仕事の関係等で海外に長期在住されている方であれば、居住地に銀行口座もあれば不動産を持っておられる場合もあります。
この場合、手続は当地の法律、又は日本の法律を適用するのかが疑問になります。
海外の場合、国によって手続きも異なり、簡単ではありません。
今回は、アメリカ(カルフォルニア州)で住む日本の方が亡くなった場合の相続手続きについて解説します。
相続手続き
日本人であれば、その相続は日本の法律によって行われますが、不動産や預金等の相続財産がアメリカにある場合、それらの財産について相続にかかわる処分行為は、当該国(アメリカ)の法律(カルフォルニア州法)に従うことになります。
アメリカの相続法
アメリカ(カルフォルニア州)の相続手続きは、日本の手続と異なります。
日本では、通常、相続財産は故人から直接相続人に承継されますが、アメリアでは相続人が承継する前に清算手続きが入ります。
アメリカでは、人が亡くなると故人の遺産(権利義務)は遺言執行者、又は遺産管理人に帰属し、清算後、残余財産(プラスの財産のみ)相続人に分配されます(管理清算主義)。
日本の「限定承認」に似た制度と言えます。
手続き
人が亡くなると、関係人が「プロベイト」と言われる裁判所による遺産管理手続き開始の申立がされます。
裁判所は、遺言執行者、又は遺産管理人を指名し(指名された者を人格代表者と言います)、人格代表者は遺産を調査、収集、評価し、故人の債務や税金を遺産から支払い、残余財産を遺言書があればその内容に従い、無ければ無遺言相続法に従って相続人に分配します。
プロベイトは、調査から清算、分配まで行うので時間を要し、人格代表者の報酬も安くはないようです。
そこで、プロベイトの回避や手続きを簡略化するような手法がとられていることが多いようです。
※遺産が184,500ドル以下の場合には、裁判所に不動産鑑定書、請願書を提出してプロベイトを回避できる、150,000ドル以下の遺産のプロベイトによらない宣誓供述書による相続等々。
生活の本拠地での違い
アメリカの相続法では、アメリカ在住者が当該地を固定的な本拠地としいて、そこを離れても帰ってくる意思あると認められる場合か、そうでない場合かで手続きが変わります。
意思を有してることを「ドミサイル」と言います。
そして、相続に関してドミサイルを有しているかどうかで手続きが変わる場合があります。
不動産に関しては、不動所在地の手続法が適用されることになりますが、人的財産と言われる動産や流動資産(預金、現金等)の相続に、ドミサイルが関係します(相続分割主義)。
亡くなった日本人がドミサイルを有していると認められる場合、当該財産の相続手続きは、ドミサイルを有している地域の法律(カルフォルニア州)に従うことになります。
※不動産があれば動産等も当該地の法律に従うとする州もあるようです。
カルフォルニア州にドミサイルを有していないとされる場合、日本の相続法が適用されます。
但し、遺産はカルフォルニア州にあるので、カルフォルニア州法の遺産管理手続きの中で調整しながら手続きを進めることになります。
まとめ
以上のように、相続手続きは日本とアメリカではかなり異なります。
カルフォルニア州の例を挙げましたが、州によっても手続きが異なったりするので、日本にいたままご自身で全てを行うのは難しいでしょう。
海外での相続に詳しい弁護士・司法書士や、現地の専門家にご相談されることをおススメします。
参考文献:渉外相続登記の実務(民事法研究会)
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