遺産分割協議書

故人が遺言書を残していない場合、故人の遺産は相続人全員で協議して決めることになります。

遺産分割協議は相続人全員が関与していることが必須で、1人でも欠けていると協議で決めた内容は無効となります。

遺産分割協議の内容は、文書にして(遺産分割協議書)相続人全員の実印を押印する必要がありますが、相続人が遠方に住んでいたり、相続人が10人、20人と多い場合、順送りに1枚の遺産分割協議書に実印をもらうようにすると、かなりの時間を要することになります。

このような場合、どのような形で遺産分割協議をすればよいか、について司法書士が解説します。

遺産分轄協議書

遺産分轄協議は相続人全員が関与し、協議の内容を記載した書面(遺産分割協議書)に相続人全員の実印による押印(印鑑証明証も要)が求められます。

一部の相続人だけで作成した遺産分割協議書では法務局は受理せず、相続登記はできません。

通常は、同じ遺産分割協議書に相続人全員が記名押印して作成する場合が多いですが、相続人が多人数であったり、全国にちらばって居住しているようなケースは簡単ではありません。

同じ遺産分割協議書に連名という形をとると、順送りに1人1人に記名、押印してもらうことになり、かなりの時間を要するでしょうし、途中で紛失してしまうと1からやり直さなければいけなくなります

遺産分割協議書の分割

遺産分割協議は相続人全員の関与が必要なことは前述のとおりですが、協議は一堂に会して行う必要はありません

最終的に遺産分割協議に全員が関与していれば良く、相続人ごとに分けて協議を行うことができます

※記載内容は同じでなければいけません。

同様に、遺産分割協議書も1枚の紙に相続人全員が連名で記名押印する必要はなく、最終的に相続人全員の実印による押印のある協議書があれば良いとされています。

例えば、相続人がA、B、Cの3人の場合、Aを中心にして、AB及びACで遺産分割協議を行い、同じ内容の遺産分割協議書を作成して、それぞれに実印(印鑑証明書付)を押印すれば、A、B、C相続人全員が関与した遺産分割協議書が成立することになります。

更に言えば、同じ内容の遺産分割協議書を3枚作成して、A、B、Cがそれぞれ個別に自分だけ記名押印する遺産分割協議書も認められます。

記名する際の日付は、各自バラバラでも構いません。
一番遅い日の日付が遺産分割協議が成立した日になります。

※遺産分割協議書が相続人毎に個別に作成される形になるので、確認のためにも協議書には相続人全員の氏名を記載しておきます。

このように個別的に作成することで、遺産分割協議書を全国にちらばって居住している相続人それぞれに一斉に送付することができ、実印(印鑑証明書付)を押印して返済してもうらうことで、時間も手間も省くことができます。

遺産分割協議証明書

遺産分割協議書と似たようなもので「遺産分割協議証明書」というものがあります。

どの遺産を誰が取得するかを明瞭に記載することは遺産分割協議書と変わりません。

遺産分割協議書の場合、「相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割の協議が成立した。」等のように記載し、相続人全員が署名押印します。

遺産分割協議証明書は「相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割協議が成立したことを証明する。」というような文言になり、全相続人が別々に同じ内容の証明書に署名押印することで遺産分割協議が成立します。

まとめ

以上のように、遺産分割協議書は相続人全員で行う必要がありますが、1枚の協議書に相続人全員が記名、押印しなければいけないということはありません。

複数に分けていても、結果、全員が同じ内容の協議書に同意して記名押印している、ということが重要です。

協議書は各自、それぞれ作成することが可能ですが、各自が内容を承諾していることが大前提です。

遠方に住んでいる相続人に、一方的に作成した遺産分割協議書を送り付けて記名押印して欲しい、と要求するケースのあるようですが、そのようなやり方をするとこじれる可能性が高くなってしまいます。

事前に分割方法の内容を伝えて了承を得た上で、遺産分割協議書を送付するようにしましょう。

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