株式相続

株式の相続

株式も相続財産になるので、株主が亡くなると株主が所有している(名義人になっている)株式について相続が発生します。

株主が亡くなると、通常、相続人に承継されます。
特定の相続人が新たな名義人として相続する場合、会社に対してどのような手続きが必要か?
遺産分割協議に時間がかかったり、紛争により新たな名義人がすぐに決まらない場合、その間の株式の取り扱いはどうなるか?

会社側からすると、亡くなった株主が大株主であれば、相続次第では会社に対する影響も大きくなります。
会社の経営、支配権をめぐって相続争いが勃発してしまうと、会社自体が紛争に巻き込まれかねません。

ここでは、株主に相続が発生した場合の相続人側と会社側の注意すべきポイントを解説します。

株主の相続人

株主が亡くなり相続が発生すると、当然、株式も相続の対象となります。
相続については、遺言書がある場合とない場合で異なります。

遺言書がある場合の手続

遺言書があれば、形式に問題がない限り、遺言書の内容に従って株式は処理されます。

特定の相続人に相続させる内容の遺言があれば、遺言者が亡くなった時に相続の効果が生じるので、実質的に当該相続人が新たな株式の所有者になります。

しかし、会社に対しては株式の名義人としての効力はまだ発生しません。
株式を取得した相続人は、自分が相続したことを示すものを提出して(遺言書等)、会社が保有している株主名簿に記載されている株主の名前を被相続人から相続人へ書換えてもらうことで、会社に対して株主として権利行使ができるようになります。

株主がオーナーであるような場合、多くの株式を保有している株主に相続が発生し、相続人として権利行使する者が決まらない状態になってしまうと、株主総会自体が開催できなくなってしまうような事業に支障をきたす事態が起こるおそれもあります。

遺言書を作成しておいて、自分が死亡した場合はすぐに特定の相続人が株式を引き継ぎ、会社に影響を及ぼさないようしておくことが大切です。

遺言書がない場合の手続

遺言書がなければ、新たな相続人が決まるまで、株式は相続人全員による共有となります。
この場合の共有は、所有権以外の権利の共有になるので、正確には準共有と言われますが、共有と同じと考えてください。

例えば、故人がある会社の株を1,000株保有していて相続人が妻と子2人であれば、当該1,000株は妻が50%、子2人が各25%の割合で共有することになります。

この共有状態は、この株式について誰がどのように相続するか決まるまでの一時的な状態と言えます。

また、妻が50%の割合で共有するという意味は、1,000株の50%である500株を保有するということではありません。
いうなれば、1株を50%の割合で保有し、それが1,000株あるということになります。
ですから、1,000株を割合で分割することはできません。

遺言書が無ければ相続人は全員で遺産分割協議を行い、当該株式の相続について決めることになりますが、では、決まるまでは当該株式について何もできないかというとそうではありません。

会社法で、「共有状態にある株式については、権利を行使する者を1人定め、会社にその者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない」と規定されています。

言い換えれば、共有者間で権利行使者を定めて会社に通知すれば、その者が権利行使することができることになります。
権利行使者の指定は、共有者の持分に従いその過半数で決めることになります。

指定された権利行使者は、他の共有者の意思に拘束されず自己の判断で権利行使できるとする判例があります。

また、会社側が当該権利を行使することに同意した場合は、指定を通知しなくても行使できるとされています。

最終的に株式の相続が決まれば、当該遺産分割協議書等を会社に提出して株式名簿上の株主名を故人から相続人に書換てもらいます。

会社の相続人への対応

基本的に、相続人から株主名簿上の名義人書換の依頼があるまで何もする必要はありません。

あくまでも、株主名簿に記載されている名義人を株主として扱います。
株主総会の招集通知等、会社から何らかの通知を株主にするときも、亡くなってはいますが株主名簿にまだ記載されている故人宛に送れば良いことになります。

会社と株主の関係が密接で、会社側が株主が亡くなっていることを知っているような場合等、名義変更前でも相続人を株主として扱うことも否定されませんが、相続問題が潜在していて、後に相続人が変わるおそれもあり、その場合、変わる前の相続人がした株主としての行為が取消されることもあるので、慎重に対応すべきでしょう。

株式の相続が決まるまでの対応

相続人から相続による名義変更通知が来るのを待つことになります。
また、相続発生後の共有者から権利行使者指定の通知を受ければ、会社はそれに応じることになります。

以後、株主名簿書換請求があるまで、会社からの通知、催告等は指定を受けた者に対してのみ行えばよいです。

この権利行使者に関しては、通知がなくても会社が同意すれば、共有者は会社に対して権利行使可能とされています。

ただし、会社の同意でされた権利行使が、共有者間での意思決定に従って決められておらず、その行為により損害を被った相続人から損害賠償請求されるおそれもあるので、共有者側から全員の署名、押印のある権利行使者指定書の提出をお願いするか、同意するにしても共有者全員を意思を確認しておく方が良いでしょう。

前述のように、権利行使者の指定は各共有者の持分の過半数で決めるとなっています。
単独で過半数を持っている者は、他の共有者と協議することなく行使者として権利行使できるとも考えられますが、知らない間に権利行使された相続人が権利の濫用を主張して紛争となるおそれもあります。

このような紛争の多くは、大株主であるオーナー家における相続争いに関連していることが多いでしょう。

このような紛争に会社自体が巻き込まれると、日々の活動にも大きな支障をきたすので、特定の共有者の意向のみで動くのではなく、できる限り共有者全員の意思を確認する方が良いでしょう。

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